請負契約と準委任契約の違いとは

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尾城 亮輔弁護士 尾城法律事務所

 システム開発に関する契約では、請負契約か準委任契約のいずれかを用いることが多いと聞きました。請負契約と準委任契約の違いについて教えてください。

 請負契約は、請負人が仕事を完成することを約し、注文者がこれに対して報酬を支払うことを内容とする契約であり、準委任契約は、仕事の完成ではなく、一定の事務処理行為を行うことを約する契約です。報酬の定め方や任意解除などについても相違がありますが、これらは任意規定であるため、当該契約における具体的な条件をよく協議して合意をすることが重要といえます。

解説

目次

  1. 請負契約と準委任契約の相違点
    1. 報酬請求権
    2. 請負人・受任者の義務
    3. 契約不適合責任
    4. 任意解除
    5. 再委託の可否
    6. まとめ
<編注>
2021年3月4日:「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行を踏まえ、記事の一部を加筆、修正しました。
また、改訂前に記載のあった「2 請負契約と準委任契約の使い分け」の項目については記事を分け、「システム開発契約では、請負契約と準委任契約をどのように使い分けるべきか」で解説しています。

請負契約と準委任契約の相違点

 請負契約は、請負人が仕事を完成することを約し、注文者がこれに対して報酬を支払うことを内容とする契約です。一方、準委任契約は、仕事の完成ではなく、一定の事務処理行為を行うことを約する契約です。2020年4月1日に施行された民法改正により、準委任契約に「成果完成型」の規定が置かれ(民法648条の2第1項)、準委任契約については、成果完成型履行割合型の類型があることが明文化されました。

 

報酬請求権

 請負契約は仕事の完成に対して報酬が支払われます(民法632条)。一方、準委任契約のうち成果完成型の場合は「業務の履行により得られる成果」に対して報酬が支払われますが、履行割合型の場合には、想定どおりの成果が上がらなくても、事務処理自体が適切に実施されれば対価を請求できます(民法648条2項参照)。

 たとえば、弁護士に訴訟の代理人となることを依頼する契約は委任契約ですが、依頼者が勝訴や和解で経済的利益を得たときに成功報酬を支払うと約束することがあります。報酬の定め方がこのような成功報酬式になっているものを成果完成型といいます。この例の場合、弁護士は、その訴訟のためにかなりの労力を費やしても、全部敗訴してしまった場合には、成功報酬を受け取ることができません。

 このように、請負契約と成果完成型の準委任契約では、契約で定めた成果(仕事)が達成できたことが報酬請求の要件となっており、受任者も成果が達成しなかった場合のリスク(の一部)を引き受けるという点で共通しています(なお、目的物がある場合には、報酬の支払いは目的物の引渡しと同時とされています。民法633条、648条の2第1項)。

 参照:「システム開発における仕事の完成の判断基準

請負人・受任者の義務

 請負契約では、請負人の義務は仕事を完成させることです。請負人が仕事を完成できなかった場合には、請負人は債務不履行責任を負います。たとえば、システム開発に合わせて、ユーザー(発注者)が、新システム用にカスタマイズしたハードウェアの購入をしていたとすると、ベンダー(請負人)の債務不履行によって新システムが稼働できなかった場合には、このハードウェアは無価値となってしまいます。このため、ハードウェアの購入費用はベンダーの債務不履行によって生じた損害となり、ベンダーはユーザーに対して、ハードウェアの購入費用を賠償する義務を負うことになります(なお、ハードウェアが他の用途に転用できるなど価値がある場合には、その価値が認められる分は損害と認められません)。

 一方、準委任契約の場合、受任者の義務は善管注意義務(民法644条)をもって、委任事務の処理をすることです。したがって、成果完成型の準委任契約の場合、報酬の支払条件とされる成果が達成できなかったとしても、ベンダー(受任者)は善管注意義務を果たしていれば債務不履行責任を負いません。先ほどの弁護士の例でいえば、受任した訴訟で全部敗訴してしまったとしても、そのことをもって、代理人の弁護士が債務不履行責任を負うことにはならないということです。

 善管注意義務違反が認められるか否かによるため単純な比較はできませんが、請負人は、「仕事」を完成できなかった場合には、報酬を受け取れないだけではなく注文者に生じた損害を賠償する義務を負うという点で、成果完成型の準委任契約よりも重い責任を負っているということができます。

請負契約 準委任契約
成果完成型 履行割合型
報酬の支払条件 仕事を完成すること(目的物がある場合には引渡し)(民法632条、633条) 成果を達成すること(目的物がある場合には引渡し)(民法648条の2第1項) 所定の委任事務を処理すること
債務不履行責任 仕事を完成できなかったとき(民法632条) 善管注意義務に違反したとき(報酬の支払条件となる成果が達成できなかったこと自体により債務不履行とはならない)(民法644条)

 なお、請負契約では、ベンダー(請負人)が債務不履行になりユーザー(注文者)から契約を解除された場合、①すでにした仕事の結果のうち可分なものにつき、②ユーザーが利益を受けるときは、その部分については仕事が完成したとみなされ、ベンダーは、ユーザーが受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法634条)。たとえば、プログラムを10本作成するという請負契約を締結し、納期までに4本だけ作成したところでユーザーから契約を解除されてしまった場合、プログラム4本分については完成したとみなされ、ベンダーは4本分についての報酬を請求できることになります。

 成果完成型の準委任契約の場合には、請負契約の規定が準用されます。このため、請負契約と同様に、ベンダーは、①成果の可分な部分について、②ユーザーが受ける利益の割合に応じて報酬を受けることができます(民法648条の2第2項、634条)。他方で、履行割合型の準委任契約については、ベンダーは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができます(民法648条3項)。

 ただし、上記の規定は、ベンダーが投入した工数分の報酬を常に受領できることを意味しません。システム全体を開発する契約で、開発の途中で契約が解除されたとき、多くの場合、他の開発会社が作業を引き継いでシステムを完成させることは容易ではありません。このため、請負契約成果完成型の準委任契約で契約をしていた場合、ベンダーがすでにした仕事によって「ユーザーが利益を受けた」といえず、既作業分について報酬を請求できないことは少なくないと考えられます。

 また、履行割合型の準委任契約の場合でも、ベンダーが善管注意義務に反していた場合には、ベンダーは債務不履行に基づき損害賠償を求められる可能性があります(民法652条によって準用される民法620条で、解除した場合の損害賠償の請求を妨げないとされています)。ベンダーの行った作業がまったく無意味なものと評価された場合、ベンダーに支払われるべき報酬相当額がユーザーの「損害」となり、報酬請求権と損害賠償請求権が相殺されることで、実質的に報酬請求が認められないと考える余地があります。

請負契約 準委任契約
成果完成型 履行割合型
注文者・委託者の責めに帰すことができない事由により仕事・委任事務が完成しない/完成前に解除された場合の報酬請求権 ①すでにした仕事の結果のうち可分な部分について、②ユーザーが利益を受けるときは、ユーザーが受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる(民法634条) 同左(民法648条の2第2項、634条) すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できる(民法648条3項)

契約不適合責任

 請負契約では、売買契約の規定が準用されることにより、ベンダー(請負人)は契約不適合責任を負います(民法559条)。具体的には、ユーザー(注文者)は、仕事の目的物に契約不適合がある場合、①履行の追完の請求(民法562条1項)、②代金の減額の請求(民法563条1項、2項)、③損害賠償の請求(民法564条、415条)、④契約の解除(民法564条、541条、542条)をすることができます。

 請負契約の特則として、契約不適合がユーザーの供した材料の性質または注文者の与えた指図による場合には、ユーザーはベンダーの契約不適合責任を問うことができません(民法636条)。ただし、ベンダーがその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかった場合には、ユーザーはやはり履行の追完等の契約不適合責任を問うことができます(民法636条但書)。

 また、契約不適合責任は、ユーザーが契約不適合を知ったときから1年以内に請負人に通知しなければ、権利行使をすることができなくなります(民法637条1項)。ただし、ベンダーが不適合を知りまたは重大な過失により知らなかった場合には、この期間制限の適用はありません(民法637条2項)。

 *なお、数量不足に関する不適合の場合には、上記の期間制限の適用はありませんが、システム開発(ソフトウェア開発)の場合に数量不足が問題となることは稀でしょう。

 参照:「システム開発における契約不適合責任

 一方、準委任契約にはこのような契約不適合責任に関する規定はありません。もっとも、準委任契約の場合、ベンダー(受任者)は善管注意義務を負っていますので(民法644条)、ベンダー側の責任により、その業務内容について請負契約であれば契約不適合と評価されるような問題が発生した場合には、ベンダーは善管注意義務違反を問われ、ユーザーから損害賠償を請求されたり、債務不履行により契約を解除されたりする可能性があります。

任意解除

 当事者の債務不履行があった場合に、相手方は債務不履行解除をすることができます。請負契約と準委任契約では、これに加えて、当事者の任意解除権が認められています。

 請負契約では、ユーザー(注文者)は、仕事の完成までの間、ベンダー(請負人)に損害を賠償して契約を解除することができます(民法641条)。この任意解除権が行使された場合、1-2の場合と同様に、①すでにした仕事の結果のうち可分なものにつき、②ユーザーが利益を受けるときは、その部分については仕事が完成したとみなされ、ベンダーは、ユーザーが受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法634条)。

 また、民法641条は、注文者は「損害を賠償して」解除することができると定めています。この「損害」は、「既に支出した費用と請負の作業全体の得べかりし利益の合計」か「既に支出した費用と既作業部分の得べかりし利益の合計」かで裁判例が分かれていますが 1、前者の立場に立った場合、ベンダーは、請負契約を最後まで履行したときと同じだけの利益を得ることができます。

 *具体的には、ベンダーはすでに費やした費用(人件費等)と得べかりし利益を請求できます。得べかりし利益は、請負代金額に当該ベンダーの営業利益率を乗じるなどして計算されます。

 準委任契約では、ユーザー(委任者)だけでなくベンダー(受任者)も、いつでも契約を解除することができます(民法651条1項)。そして、成果完成型の場合は、請負契約の規定が準用されるため、①すでにできた成果のうち可分なものにつき、②ユーザーが利益を受けるときは、その部分については成果が達成できたとみなされ、ベンダーは、ユーザーが受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法648条の2第2項、634条)。他方で、履行割合型の準委任契約については、ベンダーは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができます(民法648条2項)。

 一方、任意解除をしたときに、解除をした当事者が相手方に損害賠償をしなければいけないのは、①相手方に不利な時期に契約を解除したときと、②受任者の利益をも目的とする契約を解除したときであり、②の受任者の利益には、もっぱら報酬を得ることによるものを除くとされています(民法651条2項)。裁判例は分かれているところですが、学説上も、単に有償の準委任契約が解除されただけでは損害賠償を認めないとの見解が主張されているところであり 2、ベンダーは、未履行部分について報酬を得ることができない可能性が考えられます。

請負契約 準委任契約
成果完成型 履行割合型
既作業部分の報酬 ①すでにした仕事の結果のうち可分な部分について、②ユーザーが利益を受けるときは、ユーザーが受ける利益の割合に応じて報酬を請求できる(民法634条) 同左(民法648条の2第2項、634条) すでにした割合について報酬を請求することができる(民法648条3項)
解除に伴う損害賠償 ベンダーは損害の賠償を請求することができる(民法641条) ①相手方に不利な時期に契約を解除したときと、②受任者の利益(もっぱら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする契約を解除したときは、ベンダーは損害の賠償を請求することができる(民法651条2項)

 未履行部分の報酬(利益相当額)を受けることができないとすると、ベンダーは、自社のメンバーを他のプロジェクトに参加させて、稼働を確保する必要に迫られます。しかし、ユーザーから突然解除を言い渡されて、すぐにメンバーを参加させられるプロジェクトが見つからない場合も多いでしょう。このように任意解除により、ベンダーの地位は不安定なものとなります。

 もっとも、これらの任意解除の規定は任意規定であり、債務不履行がない限り契約を解除できないとか、契約期間満了前に契約を解除する場合には、解除をする当事者は、契約期間において支払われるべき報酬全額を支払わなければならないといった条項を設け、任意解除権を制限することもできます。請負契約であれ準委任契約であれ、契約を締結する前に、当事者間できちんと協議して、両者の法的地位を明確にしておくことが重要です。

再委託の可否

 請負契約は、仕事を完成させることが目的であるため、原則として、請負人は自由に下請業者を使用することができます。ユーザーが再委託を禁止したい場合には、契約書にその旨の特約を設ける必要があります。

 一方、準委任契約は、当事者相互の信任関係に基づくものであるため、当事者間で別段の合意がない限り、ベンダーは原則として業務を第三者に再委託することができません。このため、再委託を予定しているのであれば、請負契約とは逆に、契約書にその旨の特約を設ける必要があります。

まとめ

 請負契約と準委任契約には上記のような相違点があります。もっとも、これらの相違点はいずれも契約により修正することができるものであり、抽象的な契約類型論を戦わせるのは必ずしも適切ではありません。プロジェクトごとに具体的な条件をよく協議して合意をすることがより重要といえます。


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  1. 前者の裁判例として、東京地裁昭和47年5月23日判決・判時681号50頁、東京高裁昭和60年5月28日判決・判時1158号200頁、東京地裁平成16年3月10日判決・判タ1211号129頁など。
    後者の裁判例として、東京高裁昭和43年1月30日判決・下民集19巻1・2号17頁、名古屋高裁昭和63年9月29日判決・金判811号15頁、神戸地裁平成2年10月25日判決・判タ755号182頁など。 ↩︎

  2. 中田裕康・著「契約法」(有斐閣、2017) ↩︎

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