ベトナム現地法人の解散および清算の手続と実務上の留意点

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 ベトナム現地法人の解散および清算を行う場合の手続と、実務上よく問題になる点について教えてください。また、手続の完了までにどのくらいの期間を要しますか。

 ベトナム現地法人の解散および清算を行う場合、企業法上履践する必要がある手続や税務上の手続が必要となります。清算の完了までには、非常に時間を要し、最低でも1年~2年、場合によっては数年単位で時間を要する場合もあります。実務上よく問題になる点としては、債務超過の場合の増資、労務関係の処理、不動産(土地使用権)の処分などがあります。

解説

目次

  1. ベトナム現地法人の解散および清算を行う場合の手続
  2. 清算完了までに要する期間
  3. 実務上の留意点①:債務超過の場合の増資
  4. 実務上の留意点②:労働契約の処理
  5. 実務上の留意点③:不動産の処理(工業団地に工場を有する場合)

ベトナム現地法人の解散および清算を行う場合の手続

 ベトナム企業法上、社員総会または株主総会の特別決議により会社の解散を行うことが可能となります。解散決議には、(a)法人名および主たる事務所の住所、(b)解散の理由、(c)契約の履行および債務の弁済に関する期限および手続、(d)労働契約から生ずる債務の処理計画、(e)法定代表者のフルネームおよび署名、を含む必要があります。なお、(c)の契約の履行および債務の弁済に関する期限は、解散決議から6か月を超えない期間とする必要があります。

 解散決議後、清算手続へと移行しますが、清算完了までには以下のような対応が必要となります。

手続 詳細および留意事項
①法人の解散決定(決議) 解散決議から7営業日以内に、事業登録局、税務当局および従業員に対して、解散決議および議事録を送付する。解散決議および議事録は、国家企業登録情報ポータルサイト、解散する法人の本社および支店においても公示される。
②清算手続開始に関する通知 解散決議から7営業日以内に、事業登録局、税務当局および従業員に対して、解散決議および議事録を送付する。
③財産処分 一定の場合を除き、会社所有者もしくは社員総会(有限会社の場合)、または取締役会(株式会社の場合)が法人の財産の処分を行う。
④債務の弁済 まず、(ⅰ)法令に基づく未払賃金、退職手当、社会保険、並びに労働協約および労働契約に基づくその他の従業員の利益について弁済する。続いて、(ⅱ)税金、(ⅲ)その他の債務の順番で残債務の処理を行う。
残債務の処理が終わり、解散手続きに関する費用を支払ってもなお財産が残った場合には、当該残余財産は会社所有者や出資者(株主)等に分配されることになる。
⑤税務処理等の手続 清算する会社の法人税および従業員の個人所得税の確定申告、税務当局による税務調査、税コードの削除といった税務に関する諸手続を行う必要がある。
⑥事業登録局に対して最終手続書類を提出 すべての債務を弁済した後5営業日以内に、法人の法定代表者は、解散に関する書類を事業登録局に提出する。
⑦事業登録抹消 事業登録局は、⑥の書類受領後5営業日以内に、当該法人の事業登録を抹消する。

清算完了までに要する期間

 当局側に、清算手続を進めるインセンティブがないため、すべての手続の完了には、実務上、非常に時間を要します。最低でも1年~2年、場合によっては数年単位で時間を要する場合もあります。

実務上の留意点①:債務超過の場合の増資

 法人を清算するためには債務をすべて弁済することが必要です。したがって、資金がその債務の完済のために足りない場合、親会社等から資金を注入したうえで債務を完済し、解散を行う必要が生じます。
 ただし、法令上、法人は解散決議の後に増資を行うことができないとされていること、また、実際には、債務の弁済に必要な資金の金額については解散決議の段階にならないと判明しないことも多くあるため、法人を解散するに際しては、増資の範囲およびタイミングを慎重に検討する必要があります。

実務上の留意点②:労働契約の処理

 使用者が法人の場合、その事業を終了したときに労働契約も終了することになるため、従業員との関係では、個別の労働契約終了の交渉は、必要ありません。ただし、原則として勤務期間1年につき半月分の賃金相当額の退職手当を支払う必要がある点に留意が必要です。
 また、実務上は、労働者との紛争を未然に防ぐため、法令上の要請とは別途、労働者に対して一定の金額の退職金を支給のうえで、労働契約の終了に関する合意書を労働者から取得しておくこともあります。

実務上の留意点③:不動産の処理(工業団地に工場を有する場合)

 解散対象となるベトナムの法人がベトナム国内に工場を有する場合、工業団地から土地使用権の(サブ)リースを受け、工業団地へのリース料は一括前払いしているケースが多くあります。
 当該法人を解散するに際しては、工業団地とのリース契約を解約し、リースの残存期間分のリース料を返還してもらうことが望ましいのですが、実務上、工業団地はその資金繰りにおいて、一括前払いしたリース料を返還することは想定していないケースが大半であるため、返還には困難が伴う場合も多くあります。

 そこで、前払いしたリース料を何らかの手段で回収するため、リースを受けた土地使用権を新たな投資家に譲渡し、残存期間分のリース料金相当額を、当該第三者から譲渡代金として受領するという対応も考えられます(ただし、ベトナムの土地法制上、外国投資企業は、直接土地使用権を譲渡することは認められていないため、工業団地を交えて三者で協議を行い、合意に至る必要があります)。

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