ベトナムへの投資からの撤退の方法

国際取引・海外進出

 ベトナムに子会社を設立している場合の撤退方法としては、どのようなものがありますか。また、それぞれの方法のメリットとデメリットについて教えてください。

 ベトナムからの撤退において実務上とり得るのは、①出資持分(株式)の譲渡、②会社の解散および清算、のいずれかとなります。それぞれについてメリットとデメリットがあるので、個別の事案に応じて比較検討のうえ選択することになります。

解説

目次

  1. 撤退に際してとり得る選択肢
  2. 出資持分(株式)譲渡と会社の解散および清算の比較
  3. 出資持分(株式)譲渡についての実務上の留意点

撤退に際してとり得る選択肢

 日本企業がベトナムへの投資から撤退する際の方法として理論上考えられるのは、①出資持分(株式)譲渡、②会社の解散および清算、③会社の破産、の三通りとなります。
 もっとも、③会社の破産に関しては、ベトナムにおいても破産法は存在しており、日本と類似した手続が規定されているものの、実務の蓄積は圧倒的に少なく、裁判官をはじめとする関係当事者が手続に未習熟であることから、手続完了までに要する期間の予測が困難であり、実務上もあまり選択されることはありません。

 したがって、①出資持分(株式)譲渡、②会社の解散および清算、のいずれかから、事案に応じて選択されることになります。

 なお、本稿では、①出資持分(株式)譲渡、②会社の解散および清算を比較したうえで、①出資持分(株式)譲渡についての実務上の留意点について解説します。②会社の解散および清算に関する詳細については、「ベトナム現地法人の解散および清算の手続と実務上の留意点」を参照ください。

出資持分(株式)譲渡と会社の解散および清算の比較

 出資持分(株式)譲渡と、会社の解散および清算について、メリットとデメリットの主要な点を比較すると、次のようになります。

メリット デメリット
出資持分譲渡
  • 会社自体は存続するため、当局関係の手続は相対的にスムーズ
  • 債権債務の対応が原則としては不要であるため、買手との交渉のみで手続が完了する場合も多い(ただし契約におけるChange of Control条項の精査は必要)
  • 雇用関係も継続するため、労務紛争のリスクも相対的に低い
  • 買手側との交渉次第であるが、広範な表明保証責任を負わされる可能性がある
  • 2名以上有限会社形態の場合には他の出資者に法令上の先買権がある点に留意
解散および清算
  • 買手が見つからなくとも実行可能
  • ライセンス当局、税務当局の協力が得にくく、非常に時間がかかる
  • 契約先、従業員、土地使用者との交渉が必要になり、紛争のリスクもある

出資持分(株式)譲渡についての実務上の留意点

 基本的には、M&A取引を売手の立場として行うことになりますが、特に実務上問題となる点としては、労務関係の処理と株主ローンの処理があります。

 まず、労務関係の処理ですが、出資持分譲渡の場合には、対象会社と従業員との間における労働契約は影響を受けず、そのまま存続するため、原則として労務関係の処理は不要です。もっとも、買手側の意向により、クロージングまでに一定の人員の解雇を求められることもあります。この点、ベトナムの労働法上、会社側からの雇用契約の終了事由は厳しく制限されているため、従業員に対して(任意の)退職金の支払いをするなどして個別に交渉をする必要が生じてきます。

 次に、株主ローンの処理ですが、対象会社に対してローンの供与をしている場合で、返済期間が1年以上のケースでは、ベトナム中央銀行に対する登録が必要となります。出資持分(株式)を譲渡する場合は、この株主ローンについても、譲渡の完了までに対象会社に返済してもらうか、もしくは、買手に対して債権譲渡をすることが多いと考えられます。買手に対して債権譲渡をする場合には、債権譲渡後、ベトナム中央銀行との関係で債権者の登録を変更する必要がある点に留意してください。

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