ベトナムの外資規制の概要

国際取引・海外進出

 ベトナムの外資規制の概要について教えてください。

 ベトナムにおける外資規制に関する主な法令としては、2014年投資法およびその下位規範と、WTOコミットメントの二つがありますが、これらの二つの法令に加えて、様々なその他のベトナム国内法令により、外国投資家の出資に関する条件や制限が規定されていますので、個別の事案ごとに関連する法令をチェックすることが必要です。また、日本とベトナムの間の条約である、日越投資協定も関連法規の一つとしてあげることができます。

解説

目次

  1. 外資規制の法源
  2. 2014年投資法
  3. WTOコミットメント
  4. 日越二国間投資協定
  5. まとめ

外資規制の法源

 ベトナムへ新たに投資を行う場合は、①独資形態(=日本の親会社100%出資)で新たに会社を設立するケース、②合弁形態(=ベトナム企業との共同出資)で新たに会社を設立するケース、③既存のベトナム企業へ出資を行うケース(=M&A)、など、いくつかの形態があります。また、④合弁相手から出資持分を買い取ることにより合弁会社への出資割合を引き上げて追加投資を行うケースも、広い意味ではベトナムへの投資に該当します。

 これらのケースのように、日本企業がベトナムへ投資を行うに際しては、外資規制に関する諸法令に抵触しないかをまず確認することが必要になります。

 ベトナムにおける外資規制に関する法令の主なものとしては、(1)2014年投資法(以下「投資法」)およびその下位規範、(2)WTOコミットメント、の二つがあげられます。また、(3)日越二国間投資協定(正式名称:投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定。2004年12月19日発効。以下「日越二国間投資協定」)も関連法規の一つになります。
 これら(1)(2)の二つの法令に加えて、様々なその他のベトナム国内法令により、外国投資家の出資に関する条件や制限が規定されています。以下順に説明します。 

2014年投資法

 投資法における外資規制の分類として、(i)投資禁止分野、(ii)条件付投資分野についての規定があります。

 (i)の「投資禁止分野」は、外国投資家は一律に投資が禁止されている事業分野であり、外国投資家は、これに該当する事業に一切投資を行うことができません。具体例としては、麻薬産業や、一定の有害物質に関する事業などがありますが、実務上はあまり問題になることはありません。

 一方、(ii)の「条件付投資分野」は、ベトナムにおいて事業を行うにあたって、何らかの条件を充足する必要がある事業分野として位置付けられ、その数は現在、243にも上っており(近時の法改正で267から243に削減されました)、実務上もよく問題となります。

 条件付投資分野における「条件」は、個別の国内法令によって定められることになります。条件の具体例としては、たとえば外国投資家による出資比率の上限、事業許可証(=会社設立時に取得する投資登録証明書に加えて取得する必要があるという意味で「サブライセンス」と呼ばれることがあります)の取得、人的・物的設備の維持、などがあげられます。

 この条件付事業分野の一覧や、具体的な「条件」の内容については、ベトナム政府のウェブサイト等で一覧が整理されたうえで、一般に公開されていますので、簡単にアクセスすることができます。

WTOコミットメント

 ベトナムはWTO加盟時(2007年1月11日)に、一定のサービス分野を対象として、外国投資家に対して段階的な市場開放を約束しました。WTOコミットメントは表形式になっており、事業分野(CPCコードで特定されています)ごとに、外国投資家に対して適用される出資比率の上限その他の条件を定めています。

 また、WTOコミットメントの内容は、国内法として直接適用される旨、法令で定められています。もっとも、WTOコミットメントと異なる国内法上の規律が並存している場合もあり、その場合の優先関係についての当局による運用もケースバイケースであるため、個別の案件ごとの確認が必要となります。

日越二国間投資協定

 これは、ベトナムが日本の投資家に対して、一定の事業分野を除き特別待遇を認めて規制を緩和しているものです。具体的には、いわゆる「内国民待遇」と「最恵国待遇」があり、日本の投資家の投資活動について、前者は、「同様の状況にあるベトナムの投資家」と同等の保護が与えられること、後者は、「同様の状況にある外国の投資家」と同等の保護が与えられることを意味します。

 したがって、投資法やWTOコミットメントの規制によれば投資が認められない場合であっても、日越二国間投資協定を適用することにより、投資が認められる可能性があります。ただし、実務上は、この条約の規定がベトナム当局により守られていないケースもあり、その場合は個別の案件ごとに当局との協議が必要となります。

まとめ

 以上、ベトナムへの投資に関する諸法令の基本的な事項について解説しましたが、今回解説をした事項に加えて、個別のベトナム国内法令などによって詳細が定められているケースも多く、また、当局による運用が個別の事案ごとに異なることもありますので、投資の実行前にしっかりと法令の内容や当局の運用を確認し、不明な点があれば専門家に確認をすることが肝要です。

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