請負に関する民法改正のポイント

取引・契約・債権回収
外山 信之介弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 改正民法における請負に関する改正内容のポイントを教えてください。

改正民法における請負に関する改正内容は、大きくわけると以下の3点です。

  1. 注文者が受ける利益の割合に応じた部分的な報酬請求権の明文化(改正民法634条)
  2. 請負人の担保責任に関する規定の改正(2で詳述)
  3. 注文者の破産手続開始後の解除権に関する改正(改正民法642条1項ただし書)

解説

目次

  1. 注文者が受ける利益の割合に応じた部分的な報酬請求権の明文化
  2. 担保責任に関する改正
    1. 修補請求権に関する改正
    2. 解除に関する改正
    3. 期間制限に関する改正
  3. 注文者の破産手続開始決定による解除に関する改正

※本記事の凡例は以下のとおりです。

  • 改正民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正後の民法
  • 旧民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正前の民法

注文者が受ける利益の割合に応じた部分的な報酬請求権の明文化

 旧民法では、請負契約における報酬は「仕事の目的物の引渡しと同時に」支払われるとのみ定められており(旧・改正民法633条)、仕事が完成しなかった場合の規律については明文の定めがありませんでした。もっとも、判例上、請負人の債務不履行を理由として仕事完成前に請負契約が解除された場合でも、解除時点までの仕事の結果によって注文者が利益を受ける場合には、請負人はその利益の割合に応じた報酬請求権を有するものと解されていました 1。また、請負人は、自らに帰責事由がないにもかかわらず請負契約が解除された場合も報酬請求権を有するものと考えられてきました。
 そこで、改正民法634条は上記の解釈を明文化して、以下の2通りの場合において、請負人によって既になされた仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は注文者に対し、注文者の受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる旨を定めました。

  1. 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき
    (改正民法634条1号)
  2. 請負が仕事の完成前に解除されたとき(改正民法634条2号)

 このうち、①については、請負人の責めに帰すべき事由によって仕事を完成することができなくなった場合のみならず、当事者双方の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなった場合も該当するものと解されています 2。また、①の場合において、請負人が履行割合に応じた報酬を請求する際には、請負人は、注文者の責めに帰すべき事由がないことについて主張立証する必要はないものと解されています 3
 他方、②については、当事者双方の合意により請負契約が解除された場合も含みますが、立法担当者の見解によると、解除の際、契約関係自体を遡及的に消滅させ、報酬の請求も行わない趣旨の合意がなされた場合には、改正民法634条の適用を排除する合意があるとして、同条の適用がないと解されています。なお、いずれの場合においても、仕事の成果としての目的物に軽微ではない契約不適合がある場合においては、「注文者が利益を受けた」とはいえないため、本条による報酬請求が認められない可能性があることに注意が必要です。

 また、上記の規定とは別に、注文者の責めに帰すべき事由によって仕事を完成することができなくなった場合には、危険負担の規定(改正民法536条2項)が適用され、請負人は、注文者の責めに帰すべき事由があることを主張立証することによって、仕事が未了の部分も含む報酬全額を請求することができます。

 以上を整理すると、おおむね以下の表のとおり整理できます。

注文者の帰責事由により仕事が完成できない場合 報酬全額の請求が可能(改正民法536条2項)
請負人の帰責事由により仕事が完成できない場合 利益割合に応じた報酬請求が可能(改正民法634条1号)
仕事が完成できないことについて双方に帰責事由がない場合 利益割合に応じた報酬請求が可能(改正民法634条1号)
仕事の完成前に契約が解除された場合 利益割合に応じた報酬請求が可能(改正民法634条2号)

担保責任に関する改正

修補請求権に関する改正

 旧民法634条1項は、「仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りではない」と定めていましたが、この規定はすべて削除されました。
 このうち旧民法634条1項本文については、売買の場合に目的物の修補等による追完請求を認める改正民法562条の規定が請負の場合にも準用される(改正民法559条)ことに伴い削除されましたが、規定の内容としては、「瑕疵」の文言が「契約の内容に適合しない」に変更された以外には大きな変更はなく、実務への影響は限定的と考えられます。
 一方、旧民法634条1項ただし書については、瑕疵が重要な場合には、修補に過分の費用を要するときでも請負人は修補義務を免れないと解されており、請負人が過大な負担を強いられるという点で不合理であるとの批判が強い規定であったことから、改正民法においては削除されました。立法担当者の見解によると、改正民法においては、修補に過分の費用を要する場合には、修補は取引上の社会通念に照らして履行不能であり、履行不能に関する改正民法412条の2第1項の規定が適用されるものと解されており、注文者は請負人に対して修補を求めることはできず、契約の解除や損害賠償請求により解決されることになります。

解除に関する改正

 旧民法635条は、「仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない」と定めていましたが、この規定はすべて削除されました。
 旧民法635条本文の規定は、請負契約において、所定の場合において請負人の帰責事由の有無によらず契約を解除できる旨を定めた特則であると考えられていました。もっとも、改正民法においては、契約の解除一般について債務者の帰責事由を要件としない旨の改正がなされ(改正民法541条~543条)、本規定の意義が消滅したため、削除されることになりました。
 旧民法635条ただし書の規定は、契約解除によって工作物を除去することは社会経済上の損失が大きいことや、請負人の義務が過大であることから、契約解除の例外として定められていました。もっとも、解除を制限することによって、契約不適合があるような工作物を維持できたとしても、注文者の利益や社会経済上の利益は小さく、合理的ではないとの批判がありました。また、判例も、請負契約の目的物であった建物に重大な瑕疵があるため建て替えを要する場合に、注文者は建替費用相当額の損害賠償を請求できるとして、工作物の除去を前提とする判断を下したものもありました 4。したがって、このような場合に解除を制限することは必ずしも合理的とはいえない状況にあったことから、本規定も同条本文と同時に削除されることになりました。

 以上の旧民法の規定の削除により、請負契約の解除に際しては、改正民法の契約一般の規定に従うことになり、具体的には、無催告解除をする場合には、契約目的を達成することができないことを要し(改正民法542条1項3号~5号)、催告解除をする場合には、履行を追完する旨の催告をしたうえで、催告から相当期間経過時において、契約内容との不適合の程度が軽微でないことを要します(改正民法541条)。

期間制限に関する改正

 旧民法637条は、仕事の目的物に瑕疵があった場合に、注文者が瑕疵の修補または損害賠償の請求および契約の解除を求めるときは、目的物の引渡し時または仕事の終了時から1年以内にしなければならないと定められていました。

 この規定は、注文者が瑕疵を知らない場合や認識していない場合であっても、目的物の引渡し時または仕事の終了時から1年以内に権利行使しなければならない点で、注文者の負担が過大であるとの批判が強い規定でした。
 そこで、改正民法637条1項においては、注文者は、契約不適合を「知った時」から1年以内に通知をしなければ、履行追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求および契約解除をすることができないと定められました。なお、立法担当者の見解によると、この場合における通知は、単に契約との不適合がある旨を抽象的に伝えるのみでは足りず、細目にわたるまでの必要はないものの、不適合の内容を把握可能な程度に不適合の種類および範囲を伝える必要があると解されています。

 また、そもそも本規定のような期間制限は、履行を完了したとの請負人の期待を保護するための規定であることから、目的物の引渡し時または仕事の終了時において、請負人が契約不適合を知り、または重過失により知らなかった場合には、上記の期間制限は適用されません(改正民法637条2項)。
 さらに旧民法638条は、建物その他の土地の工作物の請負人が負う担保責任については、一般的に引渡しから長期間経過後に瑕疵が発見されることが多いと考えられたことから、引渡しから5年(コンクリート造等の場合は10年)を存続期間として定めていました。しかし、上記のとおり、改正民法においては、注文者が契約不適合を「知った時」以降に期間制限が起算されたことにより規定の意義が薄れたため、改正民法においては削除されました。
 今回の民法改正にあわせて、建設業法によって実施が勧告されている建設工事標準請負契約約款 5 についても、契約不適合責任の担保期間の改正がなされています。具体的には、従前は木造建物については引渡し後1年、コンクリート造建物については引渡し後2年を期間制限として定めていた点について、改正民法では木造・コンクリート造であるかにかかわらず担保期間が統一されたことから、工事目的物については原則として引渡し後2年、設備機器等については引渡し後1年へと変更されました。一般的に、建設工事においては、工事の過程で注文者と請負人の間で綿密に施工内容について確認がなされており、契約に適合しない部分は完成前に修補されたうえで目的物の引渡しが行われます。そのため、長期間の担保期間を設ける実益に乏しく、請負人を長期間不安定な地位に置くことは酷であるとの利益衡量から、建設工事標準請負契約約款では民法の規定を修正する形の定めが置かれています。
 なお、住宅等の瑕疵に関する期間制限に関しては、住宅の品質確保の促進等に関する法律における定めが別途適用されることに注意が必要です。

注文者の破産手続開始決定による解除に関する改正

 旧・改正民法633条によると、請負契約においては、報酬の支払いと目的物の引渡しは同時履行の関係にあり、仕事の完成は報酬の支払いよりも先に履行されるものと解されています。もっとも、注文者が破産手続開始決定を受けた場合、報酬の支払いができない可能性が高まりますが、このような場合においてまで、請負人が仕事を完成させ、目的物の引渡しと同時でなければ報酬の支払いを受けることができないとすることは、請負人にとって著しく不利益な状態になります。そこで、請負人を保護する観点から、旧民法642条1項は、注文者が破産手続開始決定を受けた場合、破産管財人のみならず、請負人に対しても請負契約の解除権を与える旨の規定を定めていました。

 この点、注文者が破産手続開始決定を受けた時点において、請負人がすでに仕事を終え、目的物を引き渡すだけの状態である場合は、請負人に対して解除権を与えなくとも不利益は生じないといえます。したがって、改正民法642条1項ただし書において、仕事完成後は、請負人による契約解除が認められない旨の改正がなされました。
 なお、旧民法642条1項後段では、注文者が破産手続開始決定を受けた場合において、仕事が完成していたときの仕事の報酬等について、請負人は破産財団の配当に加入することができるとされており、この規定は内容を同じくしたまま改正民法642条2項に移されています。

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編著等:長瀨 佑志、長瀨 威志、母壁 明日香
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  1. 最高裁昭和56年2月17日判決・判時996号61頁 ↩︎

  2. 筒井健夫・村松秀樹編著「一問一答 民法(債権関係)改正」(商事法務、2018)338頁 ↩︎

  3. 脚注2・339頁 ↩︎

  4. 最高裁平成14年9月24日判決・集民207号289頁 ↩︎

  5. 国土交通省「建設工事標準請負契約約款について」(2020年5月18日最終閲覧)参照 ↩︎

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