中国、輸出入管理条例改正 技術ライセンス契約の内容への影響とは?

国際取引・海外進出

目次

  1. はじめに
  2. 権利担保責任条項(本条例24条3項)の削除
  3. 改良技術の帰属に関する条項(本条例27条)の削除
  4. 技術ライセンス契約における制限的条項を禁止する条項(本条例29条)の削除
  5. さいごに

はじめに

 中国の国務院 1 は、2019年3月18日、一部の行政法規を改正する決定(国務院令709号)を公布し、技術輸出入管理条例に定める各条項のうち一部を削除する改正を行いました(以下この改正を「本改正」といいます)2。本改正は、公布日に施行されています。

 技術輸出入管理条例(国務院令〔2001〕331号。以下「本条例」といいます)は、ライセンサーが負うべき責任の内容を強行法規的に定めており、契約でこの責任を免責する定めを置くことができないと考えられています。そうした理由から、本条例は、一般に、日本企業がライセンサーとして中国企業に対し技術ライセンスを行う場合に留意すべき規制とされていました。

 本改正は、これらの規制に関する条項を一部削除するものであり、日本企業が中国企業に対して技術ライセンスを行う契約の内容にも影響を及ぼすものです。他方で、本改正後も引き続き留意すべき点があります。そこで、今回は、本改正の主な内容と影響および関連法令について解説を行います。

 なお、本条例にいう「技術輸出入」には、特許権の譲渡、特許出願権の譲渡、特許の実施許諾、技術ノウハウの譲渡、技術サービスおよびその他の方法による技術移転を含みます(本条例2条2項)。

権利担保責任条項(本条例24条3項)の削除

 本条例24条3項は、ライセンシーである中国企業が技術供与を契約の定めどおりに使用した結果として、第三者の合法的な権益を侵害した場合には、ライセンサーである外国企業がその責任を負うこと(ライセンサーの権利の完全性に関する保証責任)を定めていたところ、本改正によってこの規定が削除されました

 従来は、この規定により、日本から中国の企業に技術供与やライセンスを行うときには、その技術や権利を使用、実施した際に第三者の権利を侵害したとすると、ライセンサーや技術供与者である日本企業が責任を負わなければならないとされていました。その結果、ライセンサーや技術供与者である日本企業が不測の損害を被る可能性があり、契約を締結する際の問題点の1つとなっていました。
 今回、本条例24条3項が撤廃されたことにより、ライセンサーや技術供与者である日本企業が、このようなリスクを免れることが可能になりました

 もっとも、本条例24条3項が削除されたからといって、ライセンサーの権利の完全性に関する保証責任について、法律上の規定がまったくなくなったわけではありません。中国企業と外国企業の間における技術輸出入に適用される本条例とは別に、中国の契約法(中国語:合同法、主席令〔1999〕15号)は、技術ライセンス契約に適用される規定を設けています(契約法322条~355条等)。

 このうち、契約法353条は、「譲受人が約定に従い特許を実施し、技術ノウハウを使用し他人の合法的権益を侵害した場合には、譲渡人が責任を負う。ただし、当事者が別途契約で定めた場合を除く」と定めています。この条文は、原則としては本条例24条3項と同様の内容を定めるものの、本条例24条3項と異なり、契約の定めによってライセンサーの責任を緩和する余地を認めるものです。

 本改正によって、日本企業が中国企業に対して行った技術ライセンスについて第三者から権利侵害の主張をされた場合の取扱いには、本条例24条3項ではなく、契約法353条が問題となります。

 上記のとおり、契約法353条は、契約の定めによってライセンサーの責任を緩和する余地を認めていることから、今後は、ライセンサーの責任を限定化するための交渉を行うことおよび契約における約定が重要になります

権利担保責任条項(本条例24条3項)の削除

改良技術の帰属に関する条項(本条例27条)の削除

 本条例27条は、「技術輸入契約の有効期間内において、技術改良の成果は改良側に帰属する」と定めていましたが、本改正によってこの規定が削除されました

 従来は、日本企業が中国企業に技術供与やライセンスを行う場合、その実施から改良技術が得られたときであっても、その改良技術は改良者、つまり実施企業でありライセンシーである中国企業に帰属することとされていました。この規定が撤廃されたことにより、改良技術の帰属についても、契約書で明示すればさまざまな定めが可能となります。

 この点に関し、契約法354 条は、「当事者は、互恵の原則に従い、技術譲渡契約において、特許の実施または技術ノウハウの使用後に改良された技術成果の享受方法を契約で約定することができる。約定がない場合、または約定内容が明確でない場合において、本法61条の規定により確定することができないときは、当事者の一方が改良した技術成果について、その他の当事者は、これを享受する権利を有しない」と定めています。

 以上から、本改正によって、日本企業が中国企業に対して行った技術ライセンスにかかる改良技術の帰属についても、契約における約定の内容が重要になります

改良技術の帰属に関する条項(本条例27条)の削除

 ただし、契約法329条は「不法に技術を独占し、技術の進歩を妨げ、または他人の技術成果を侵害する技術契約は、これを無効とする」と定めています。加えて、「最高人民法院による技術契約紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(法釈〔2004〕20号。以下「本解釈」といいます)が契約法329条を含む技術契約に関する契約法の条文の解釈を示しています。そのため、改良技術の帰属に関する契約の約定を検討する際には、契約法329条および本解釈に留意する必要があります。

 たとえば、本解釈10条1号は、当事者の一方が改良技術を無償で他方当事者へ譲渡することを要求すること、当該改良技術の知的財産を一方の当事者が無償で独占することなどを禁止しています。これに違反した場合は、「不法に技術を独占し、技術の進歩を妨げ、または他人の技術成果を侵害する技術契約」に該当するとして、契約法329条に基づき技術ライセンス契約が無効になる旨を定めています。

 なお、契約法および本条例の適用を免れるために、技術ライセンス契約の準拠法を中国法以外の国または地域の法律にすることも考えられますが、紛争時に、契約法329条は強行法規であると判断される可能性は一定程度あると考えられます(契約法52条参照)。

 また、本解釈は、ライセンサー側またはライセンシー側のいずれにも同様に適用されるものです。たとえば中国企業が改良技術を一方的に独占することを主張した場合、日本企業としては、本解釈を根拠として交渉を行うことも考えられます。

技術ライセンス契約における制限的条項を禁止する条項(本条例29条)の削除

 本改正によって、「技術輸入契約には、以下の各号に掲げる制限的条項を含めてはならない」と定める本条例29条が削除されました

 もっとも、本条例29条が削除されたとしても、上記3(改良技術の帰属に関する条項)と同様に、本条例29条1号、3号~7号については、本解釈等に同趣旨の規程があるため留意する必要があります。

 また、本条例29条2号に関しては、契約法344条が「特許実施許諾契約は、当該特許権の存続期間内においてのみ有効である。特許権の有効期間が満了し、または特許権の無効が宣告された場合は、特許権者は、当該特許につき他人と特許実施許諾契約を締結してはならない」と定めています。

本条例(国務院令〔2001〕331号)関連する本解釈(法釈〔2004〕20号)
29条1号譲受人に対し、技術輸入に必須ではない付帯条件(必須ではない技術、原材料、製品、設備またはサービスの購入を含む)を求めること10条4号
29条2号譲受人に対し、特許権の有効期間が満了し、または特許権が無効宣告された技術について許諾使用料の支払いまたは関連義務の履行を求めること無し(ただし、契約法344条)
29条3号譲受人に対し、譲渡人から提供された技術を改良し、または改良した技術の使用を制限すること10条1号
29条4号譲受人に対し、譲渡人以外の他の供給先から譲渡人が提供した技術に類似し、または競合する技術の取得を制限すること10条2号
29条5号譲受人に対し、原材料、部品、製品または設備の購入ルートまたは供給先を不合理に制限すること10条5号
29条6号譲受人に対し、製品の生産数量、品種または販売価格を不合理に制限すること10条3号
29条7号譲受人に対し、輸入した技術を利用し、生産した製品の輸出ルートを不合理に制限すること

 以上のとおり、本改正によって、ライセンサーが外国企業である場合に特別に適用される本条例29条は削除されたものの、中国国内の企業同士の技術ライセンス契約であっても適用される得る規定(契約法329条および本解釈等)には引き続き留意する必要があります

さいごに

 本改正は、2019年3月15日に成立した外商投資法(主席令〔2019〕26号。施行日は2020年1月1日)において示された原則の1つである、外国企業の内国民待遇 3 を踏まえた改正であると考えられます。

 外国企業の内国民待遇のほかにも、外商投資法は、22条2項において、「技術協力の条件は、投資の各当事者が、公平の原則に則り、平等に協議を行うことにより確定されるものとする。行政機関およびその職員は、行政手段を用いて技術移転を強要してはならない」と定め、外国企業の知的財産保護に配慮した規定も設けています。

 以上のとおり、昨今の改正(特に本条例24条3項の削除(上記2))によって、日本企業がライセンサーとして中国企業に対して技術ライセンスを行う際の法的環境は徐々に整備されています。今後は、契約の内容がますます重要になるため、契約締結にあたっては慎重な検討が求められます。


  1. 国務院は、日本の内閣に相当する行政の執行機関であり、人民政府とも呼ばれます。 ↩︎

  2. 国务院关于修改部分行政法规的决定〔2019〕」 ↩︎

  3. 内国民待遇とは、外国企業を中国企業と同様の水準で規制し、取り扱う原則のことです。 ↩︎

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