公益通報者保護法に基づき事業者がとるべき措置に関する指針

危機管理・内部統制

目次

  1. コーポレートガバナンス・コードと内部通報制度
  2. 公益通報者保護法の改正点の概要
    1. 事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくするための改正
    2. 行政機関等への通報を行いやすくするための改正
    3. 通報者がより保護されやすくするための改正
  3. 本指針の概要
    1. 従事者の定め(公益通報者保護法第11条第1項関係)
    2. 内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置(同法第11条第2項関係)

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.186」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 消費者庁は、2021年8月20日、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(以下「本指針」といいます。)を公表しました。
 2020年6月に公益通報者保護法の一部を改正する法律が成立・公布され、2022年6月1日の施行に向けて準備を進めていることが公表されています。本指針は、本改正により事業者に義務付けられた内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置について、具体的内容を定めたものです。
 本特集では、公益通報者保護法の改正点・本指針の概要等をご紹介します。
 本指針に照らして自社における内部通報制度が十分なものとなっているか確認し、今後消費者庁が公表する予定の「指針の解説」1 も踏まえつつ、内部通報体制と社内規程に不十分な点があれば施行日までに必要な整備を行うことが望ましいと考えられます。

コーポレートガバナンス・コードと内部通報制度

 コーポレートガバナンス・コードでは、上場会社が内部通報に係る適切な体制整備を行い、取締役会は当該体制整備を実現する責務を負い、その運用状況を監督すべきこと(原則2−5)、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置や、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきこと(補充原則2−5①)を定めており、本年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂時のパブリックコメント手続においては、本改正に関連する意見に対し、「原則2−5の『内部通報に係る適切な体制整備』に当たっては、令和2年の公益通報者保護の改正が施行されれば、当該改正内容も踏まえてご対応いただくことが考えられます。」との回答も示されています。
 本年6月に改訂された投資家と企業の対話ガイドラインでは、「内部通報制度の運用の実効性を確保するため、内部通報に係る体制・運用実績について開示・説明する際には、分かりやすいものとなっているか」(同ガイドライン3−12)が新たに定められ、内部通報に関する開示の充実も求められるようになりつつあります。コーポレートガバナンス・コード対応の点からも、改正公益通報者保護法の施行後は改正法を踏まえた対応・開示を行うことが考えられます。

公益通報者保護法の改正点の概要

事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくするための改正

  • 事業者に対し、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設定、調査、是正措置等)を義務付け。その具体的内容として本指針が策定された。
     ※中小事業者(従業員数300人以下)は努力義務
  • その実効性確保のために行政措置(助言・指導、勧告及び公表)を導入
  • 内部調査等に従事する者に対し、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け(同義務違反に対する刑事罰を導入)

行政機関等への通報を行いやすくするための改正

  • 行政機関等に対する公益通報が保護される要件を緩和
    (改正前) (改正後)
    通報対象事実があると信じるに足りる相当の理由がある場合 左記の場合のほか「通報対象事実があると思料し、かつ、通報者の氏名等を記載した書面を提出する場合」を追加
  • 報道機関等に対する公益通報が保護される要件の緩和
    報道機関等に通報する場合、行政機関等に対する公益通報よりも保護される要件が厳しく、
    「通報対象事実があると信じるに足りる相当の理由がある場合」の要件に加え、法定の事由に該当する必要があるところ、以下の事由を新たに追加
    ・ 財産に対する損害(回復困難または重大なもの)の危険がある場合
    ・ 通報者を特定させる情報が洩れる可能性が高い場合

通報者がより保護されやすくするための改正

(改正前) (改正後)
保護される通報者の範囲の拡大 労働者 退職者(退職後1年以内)や役員(原則として調査是正の取組みを前置)を追加
保護される通報対象事実の拡大 刑事罰の対象となる行為 行政罰の対象となる行為を追加
保護の内容の拡大 (新設) 通報に伴う損害賠償責任の免除を追加

(出所)消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)概要」に基づき作成

本指針の概要

従事者の定め(公益通報者保護法第11条第1項関係)

  • 事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。
  • 事業者は、従事者を定める際には、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くことが従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならない。

内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置(同法第11条第2項関係)

1 部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備

① 内部公益通報受付窓口の設置等

内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定める。

② 組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置

内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に係る公益通報対応業務に関して、組織の長その他幹部に関係する事案について、これらの者からの独立性を確保する措置をとる。

③ 公益通報対応業務の実施に関する措置

  • 内部公益通報受付窓口において内部公益通報を受け付け、正当な理由がある場合を除いて、必要な調査を実施する。
  • 当該調査の結果、通報対象事実に係る法令違反行為が明らかになった場合には、速やかに是正に必要な措置をとる。
  • 是正に必要な措置をとった後、当該措置が適切に機能しているかを確認し、適切に機能していない場合には、改めて是正に必要な措置をとる。

④ 公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置

内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関し行われる公益通報対応業務について、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとる。
2 公益通報者を保護する体制の整備

① 不利益な取扱いの防止に関する措置

  • 事業者の労働者及び役員等が不利益な取扱いを行うことを防ぐための措置をとるとともに、公益通報者が不利益な取扱いを受けていないかを把握する措置をとり、不利益な取扱いを把握した場合には、適切な救済・回復の措置をとる。
  • 不利益な取扱いが行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。

② 範囲外共有(※公益通報者を特定させる事項を必要最小限の範囲を超えて共有する行為)等の防止に関する措置

  • 事業者の労働者及び役員等が範囲外共有を行うことを防ぐための措置をとり、範囲外共有が行われた場合には、適切な救済・回復の措置をとる。
  • 事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。
  • 範囲外共有や通報者の探索が行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。
3 内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置

① 労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置

  • 法及び内部公益通報対応体制について、労働者等及び役員並びに退職者に対して教育・周知を行う。また、従事者に対しては、公益通報者を特定させる事項の取扱いについて、特に十分に教育を行う。
  • 労働者等及び役員並びに退職者から寄せられる、内部公益通報対応体制の仕組みや不利益な取扱いに関する質問・相談に対応する。

② 是正措置等の通知に関する措置

書面により内部公益通報を受けた場合において、当該内部公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正に必要な措置をとったときはその旨を、当該内部公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において、当該内部公益通報を行った者に対し、速やかに通知する。

③ 記録の保管、見直し・改善、運用実績の労働者等及び役員への開示に関する措置

  • 内部公益通報への対応に関する記録を作成し、適切な期間保管する 。
  • 内部公益通報対応体制の定期的な評価・点検を実施し、必要に応じて内部公益通報対応体制の改善を行う。
  • 内部公益通報受付窓口に寄せられた内部公益通報に関する運用実績の概要を、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲において労働者等及び役員に開示する。

④ 内部規程の策定及び運用に関する措置

この指針において求められる事項について、内部規程において定め、また、当該規程の定めに従って運用する。
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部会社法務・コーポレートガバナンスコンサルティング室
03-3212-1211(代表)

  1. 「指針の解説」は、2021年4月に消費者庁が公表した「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会 報告書」に記載された指針に関する考え方等や、パブリックコメント手続で寄せられた提案・質問等も踏まえた内容となることが見込まれます。 ↩︎

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