弁護士を作業から解放する「新時代の法律事務所」を目指して スパークル法律事務所 三谷弁護士に聞く設立への思い

コーポレート・M&A

目次

  1. 弁護士として、時代によって移り変わるクライアントのニーズに対応したい
  2. 弁護士を作業から解放する「新時代の法律事務所」を目指して独立
  3. 弁護士が能力を発揮し、輝ける事務所を目指して
  4. ワンチームで実現するクライアントへの最良のサービス提供

「テクノロジーを活用して弁護士業務を効率化していきたい」

今年4月、新たに誕生したスパークル法律事務所代表の三谷 革司弁護士は語る。問題意識の背景には、弁護士に膨大な作業を求める法律事務所の常識があった。

クライアント・ファーストを徹底するにはスピードと質を追求する必要があり、新しい技術の活用が不可欠。自分が理想とする「新時代の法律事務所」は弁護士が輝ける事務所にしたい。事務所名 の「sparkle(輝く)」に込めた思いだ。

国内大手法律事務所のパートナーとして幅広い案件に取り組んできたキャリアを活かして、業界の当たり前をどう覆すのか。三谷弁護士の挑戦を追った。

プロフィール
三谷 革司
2002年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2008年NY州弁護士登録。東京大学卒、米国Columbia Law School (LL.M.)。2021年スパークル法律事務所設立。会社法・株主総会アドバイス、コンプライアンス・競争法案件(カルテル事件等)、M&A、国際取引等、企業法務全般について豊富な経験を有する。会社紛争事案、企業間の紛争事案の解決にも実績を有する。

干場 智美
2014年弁護士登録(第二東京弁護士会)。北海道大学法学部卒業、一橋大学大学院法学研究科修了。2021年スパークル法律事務所。企業法務全般について幅広い知見を有しており、その他不動産法務においても豊富な経験を有する。近時はヘルスケア関連法務・エネルギー法務・人事労務分野にも注力。

弁護士として、時代によって移り変わるクライアントのニーズに対応したい

まずは三谷先生が弁護士を志したときのお話から伺えますか?

三谷弁護士:
20数年前、法学部の学生だった頃、就職活動をするかどうかを考える時期に弁護士の方の話を聞く機会がありました。

弁護士という職業は自分の実力で仕事ができるのと同時に、困っている方を救済し、社会正義も実現できるということで、これはやりがいがありそうだな、と感じていました。

自分自身の性格を分析すると、どちらかというと曲がったことが嫌なタイプだと自覚はしていたので、思う存分言いたいことを言える弁護士は向いているとも思っていました。ただし、大学時代はかなり自由な生活に明け暮れていて、とても模範的な学生とは言えなかったですけど(笑)。

学生時代しかできないことに打ち込まれていたのですね(笑)。弁護士資格を取得し、桃尾・松尾・難波法律事務所に入所されます。企業の案件をやりたいという思いがあったのですか?

三谷弁護士:
私の前職の事務所は今でこそ50名を超える規模になっていますが、私が入所した当時は10名ちょっとの事務所で、企業法務だけではなく、一般民事や倒産事件もあり、国選や個人事件も自由にやらせてもらえるということで、幅広い案件が経験できる環境だと思い、入所しました。

特に思い出深い案件や、弁護士としての方向性を決めるような出来事があれば教えてください。

三谷弁護士:
もちろん、1つひとつの案件は思い出深いのですが、業務分野の移り変わりの方が印象的です。

若手の頃はバブル崩壊後の影響を受け、事業再生、倒産案件、不良債権処理の案件が比較的多かったのですが、景気回復に伴い同種の案件は減りました。今は、民事再生や会社更生の事件数はかなり少なくなっています。

入所から5年後、アメリカに留学し、現地事務所の研修で米国の独占禁止法、訴訟対応にどっぷり浸かりました。帰国して、2010年代前半は、日本の自動車メーカーがアメリカの反トラスト法違反で訴追される事件が相次ぎ、独占禁止法の案件でかなり忙しく、海外出張も多かったです。ただ、こちらも最近は落ち着いています。

その後は、株主提案、敵対的買収、委任状争奪戦やアクティビスト対応の分野が活発になってきて、会社法改正もあり、コーポレート・M&A関連のご相談を多くいただくようになりました。

もちろん、訴訟のように普遍的な分野もありますが、時代によって弁護士に求められる案件は変化していくことを感じています。クライアントのニーズがあってこその弁護士業なので、私としては、業務分野はあまり絞らず、信頼してくれるクライアントのために最適なアドバイスを提供したいと思って取り組んできました。

スパークル法律事務所代表 三谷 革司弁護士

スパークル法律事務所代表 三谷 革司弁護士

弁護士を作業から解放する「新時代の法律事務所」を目指して独立

コロナ禍において、新しいことを始めるのに萎縮してしまう方もいると思います。このタイミングで独立された意義について伺えますか?

三谷弁護士:
コロナによって色々な社会の物事の構造が変わっています。このタイミングはむしろチャンスだと思っています。この構造の変化に対応できるサービスを提供できれば、クライアントのニーズも満たせると考えていました。

確かに、大きく変化していますね。独立については元々考えていたのですか?

三谷弁護士:
ある程度完成した組織の中で、パートナーを続ければ、その後の人生は安定していたかもしれません。ただ、やはり人数も多いですし、そう簡単にリスクはとれませんからダイナミックな変化は難しかったです。弁護士人生も後半に入り、厳しい環境で自分を成長させたい、自分自身に課題を課したいと思っていました。

どうしても1つひとつのことを実現するのに時間がかかる一方で、自分が理想とする事務所像を実現するために残された時間はあまり多くはないと思ったのです。

貴所のウェブサイトでは「新時代の法律事務所」を目指すと掲げられています。先生の理想を体現した言葉だと思うのですが、どのような事務所が理想ですか。

三谷弁護士:
弁護士が最大限頭脳を活用し、クライアントにとって最適なアウトプットを提供する付加価値の高い事務所です。そのためにテクノロジーを用いて弁護士業務を効率化していくことが当然に必要です。

テクノロジーは弁護士業務を劇的に変化させています。1つの例を挙げると、限られた書籍から必要な情報を探すという過程であったリサーチ業務は、今や、人間が到底網羅しきれない情報の海から、オンライン上で必要な情報を探す過程に変化してきています。そこで、重要なのは、キーワードの選定と検索のスキルであり、それによって入手できる情報が変わってきます。うまく使うことで、短時間で、より必要な情報にたどり着くことができます。

もっとテクノロジーが進歩すれば、リサーチ結果を関連度順にまとめ、自動的に必要な情報のサマリーができるところまでくるかもしれない。まさに大手事務所でアソシエイトが日々従事している業務ですね。でも、一番の違いは、それが一瞬で出来上がってしまうところです。

このような考えに至った背景には、元々抱いていたタイムチャージ制に対する抵抗感がありました。

実は法律事務所では、弁護士が頭脳を活用する時間より、作業する時間の方が多い傾向にあります。特に若手アソシエイトの業務の相当な部分が、実は作業で占められています。しかしながら、タイムチャージ制であるが故に、パートナーはその内実が本質的なものかどうかはともかくとして、とにかく時間が付いていて、何らかの見た目の分量のある細かそうな成果物が存在していれば、クライアントに報酬を請求できるので良いだろうという発想にもなりがちです。

テクノロジーを活用すれば、膨大な時間をかけている作業の相当部分が機械で置き換えられるはずです。ただ、その分、タイムチャージが減ってしまうとも言えますが、減った時間をより本質的な弁護士の頭脳を使った仕事に振り向けることができるのではないかと思っています。

業務を効率化することで、本質的な弁護士としての仕事に集中する、というのはこういったことになります。

実際、どのようなテクノロジーを活用されていますか?

三谷弁護士:
とはいえ、まだ日々試行錯誤している段階ですが(笑)、代表的なところでは、契約書のレビューにはAI-CONを、リサーチにはBUSINESS LAWYERS LIBRARYを活用しています。リーガルテックの開発競争も激しいので、色々なツールを試しています。

コミュニケーションツールは、やはりSlack、チャットワークが中心ですが非常に便利ですね。各種Web会議ツールも当然活用しています。

また、フォレンジックを行う案件では、ベンダーが提供するAIによるドキュメントレビューの仕分けサービスを利用することがあります。

テクノロジーを活用して、クライアントにはどのような価値を提供されたいと考えていますか?

クライアント・ファーストが共通する理念ですが、ニーズを的確に把握したいと思います。デイリーの相談にはスピーディに対応し、大型案件や企業が危機に瀕しているときには徹底的な対応をし、大手事務所に匹敵する質の高いアドバイスを行いたいと考えています。

クライアント・ファーストは三谷先生の一貫したお考えですね。

三谷弁護士:
たとえば、訴訟において、膨大な記録の前で根負けして徹底した検討を諦めてしまったら、書面も中途半端になり、揚げ足を取られ、変な負け方をしてしまいます。

一方で、徹底した検討というのは、膨大な量の書面を作ったり、ひたすら時間をかけて様式美を追求することと同義ではありません。先ほども言いましたが、私はタイムチャージの総量で稼ごうという発想は持っていません。案件の中で、客観的に必要な部分を見定めながら、本当に必要とされる検討を行い、本当に価値のある情報をクライアントに提供したいと考えています。それこそがクライアント・ファーストの姿勢だと思っています。

特に、どういうクライアントを支援したいと思われますか。

三谷弁護士:
業務分野で言えば、製薬・医療機器の案件はこれまで多くやっていました。独占禁止法の案件も多かった関係で、メーカーのクライアントも比較的多かったと思います。

ただ、これに限らず、ソリューションを探している企業、リーガル面で膠着しているような企業の方がいれば、我々の機動的なリーガルサービスを是非届けたいと思っています。

特に、スタートアップやベンチャー企業、新しいビジネスを開拓する人たちからは、こちらも刺激を受けます。経営の悩みも共有できますしね。

実は、私は、難解で複雑怪奇な案件ほど燃えるタイプで(笑)、従前の弁護士が投げ出している事件や、どうしようもなくなって困っている方はぜひご支援したいです。利害関係者の権利が錯綜して、解決の道筋がまったく見えない中で、法律の知識を駆使して交渉し、最終的に解決に導けたようなときは、本当に弁護士としての価値を提供できたと感じます。もちろん、すべての案件が上手くいくということではありませんが。

具体的な事件の類型で言うと、株主対応や、社外取締役との関係がうまくいかないケース、M&Aの紛争、事業承継、仲介で会社を買ったはいいけど表明保証条項が機能しないようなケースなどは、力を入れていますが、それに限らず、困難なトラブルに見舞われた企業の支援をしていきたいですね。

スパークル法律事務所代表 三谷 革司弁護士

弁護士が能力を発揮し、輝ける事務所を目指して

2人目のメンバーとして干場先生が入所されました。

三谷弁護士:
事務所名の「スパークル」には、「個々の弁護士が能力を発揮して輝ける場にしたい」という思いがあります。

この世界は、学校の成績が良い人、スペックが高い人、経歴が立派な人は多いですが、実際の仕事に対するモチベーション、パッションは確実にアウトプットに影響します。もっとも、履歴書では、どこまでクライアントのために力を注げるかは分かりません。

干場さんはモチベーションが非常に高く、仕事に対する熱意を目力から感じました。弁護士として輝ける方だと信じています(笑)。

干場弁護士:
プレッシャーになりますね(笑)。

三谷弁護士:
干場さんはグローバル企業含めて複数の会社でインハウスの経験をされていました。自分はインハウスの経験がないので、示唆を与えてもらうことも期待しています。

干場弁護士:
僭越ではありますが、企業における意思決定プロセスや実務慣行、その他社内で生じる様々な問題等、インハウス特有の知見を業務において活かすことができれば良いなと思っています。

スパークル法律事務所のロゴマーク

スパークル法律事務所のロゴマーク

干場先生のご経歴について教えてください。

干場弁護士:
当初は主に一般民事を取り扱っている事務所に勤めていました。企業法務の案件も担当したことはありましたが、企業の経営に対する考え方や弁護士に対する要求内容をオンサイトで学びたいと考え、次のキャリアとしてインハウスを選択しました。

企業に在籍していたとき、法務としてできることは幅広く経験させていただいたように思います。現場で文字通り走り回っていたこともありました。

幅広い経験をされた後、企業から事務所に戻る選択をされたのですね。

干場弁護士:
そうですね、インハウスで学んだことを反映・昇華させる形で、法律事務所での業務を行いたいと考えていました。

スパークル法律事務所に決められたポイントはどこにありましたか?

干場弁護士:
企業で実際に勤務している際に感じたことですが、最新のテクノロジーの利用は当然の前提になっています。外部の弁護士としては、どれだけそれを意識できるかがポイントになると考えていました。

また、新型コロナから生じる法律問題に代表されるように、時代の変化に応じた法律問題が企業の周りでは絶えず起きています。私自身、「企業のために変化に対応できる弁護士でありたい」という気持ちがありました。

そのような中で、三谷先生とお会いして、最新のテクノロジーを取り入れたいと考えられていた点やクライアント・ファーストというお話を伺い共感しました。

クライアント側にもインハウスの方が増えていると思いますが、どのような影響がありますか?

三谷弁護士:
確かに、有資格者という意味でのインハウスの方は、最近増えてきたと思います。企業と法律事務所の間の垣根が低くなることによって、より法律事務所の内実を知っている人が増えるので、結果として、事務所名だけでなく、実力や案件の性質によって弁護士が選ばれるようになってきていると感じています。

既存の顧問先やネームバリューのある法律事務所以外に依頼するには上司に説明する理由が必要ですが、企業内にいる同期の弁護士が社内で起用を説得してくれたりといったこともあり、ありがたく思っています。

実力のある弁護士の方にはチャンスですね。

三谷弁護士:
本音で言えば、ネームバリューだけで弁護士を選び、企業が直面している問題に対して最善の選択ができているか疑わしい事態も散見されます。

欧米と違い、日本の弁護士業界はコンフリクトの基準が緩いことも一因だと思っています。本当に、その事務所が自社のために真摯にサービスを提供してくれるのか、真剣に考えた方が良いと思います。

私見ですが、今の大手法律事務所に近い200名〜300名規模くらいの事務所が、国内に20はほしいと思います。そのためには、もっと法律事務所の頭数も増えて全体が底上げされた方がいいですよね。この思いも独立した理由の1つです。

スパークル法律事務所代表 三谷 革司弁護士

ワンチームで実現するクライアントへの最良のサービス提供

3年後、5年後、10年後というスパンで見たとき時に、事務所をどのようにされていきたいですか?

三谷弁護士:
まずはメンバー集めが当面の自分のミッションなので、有能な人材を集めてクライアントに最良のサービスを提供する体制を作りたいですね。

熱意があり、私たちが目指している事務所像に共感いただける方はぜひご連絡いただきたいと思います。

その先はメンバーたちと協議して急拡大していくか、じっくりいくか考えたいですね。干場さんはどうですか?

干場弁護士:
プライベートプラクティスであっても、ワークライフバランスを取りながら最良のサービスが提供できるようにしたいです。

三谷弁護士:
そういう意味でも、激務が美徳とされる旧来型の事務所の常識を覆したいですね。個人的にも、ライフが充実していないと良いサービスは提供できないし、サステナブルではないと思います。

この部分を両立した企業法務系の法律事務所を作るという点も、「次世代の法律事務所」を作るというミッションの1つかもしれませんね。

若手の先生で一緒に働きたい、と思う方もいると思います。どのように育成されていきたいか、どういう環境で働けるのか最後に教えていただけますか。

三谷弁護士:
メンバーとは常に議論し、忌憚ない意見交換ができるワンチームでありたいと思っています。若手の方に対しては、成果物もきっちり見ますが、任せる部分は任せて成長を支援したいですね。

干場先生は三谷先生とお仕事をされてどうですか?

干場弁護士:
まだ入所してそれほど経っていませんが、初めて経験することも多く視野が広がったように思います。また、三谷先生からは、既に多くのフィードバックをいただいており、非常に勉強になります。日々充実しております(笑)。

(写真:弘田 充、取材・文・編集:BUSINESS LAWYERS 編集部)

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